水槽

プールじゃない

2月から、部分的に病んでいる

2月から精神的に不調があって、9月になってようやく心療内科を受診した。メンタルクリニックと呼べばいいのか、精神科と呼べばいいのか、心療内科と呼べばいいのかいつもわからなくて、言葉を選ぶ時間に気まずさが発生する。

受付で保険証を出すと2種類の紙を渡されて、壁際の椅子に腰掛けて記入する。当たり前のことだけど体温計は渡されない。

記入する紙のひとつは問診票で、氏名や個人情報と現在の不調について、そして家系図を描く欄がある。女性は○、男性は□の記号で描く。書き方の例みたいなものがあって、そこには祖父母と両親と子供が居る男性の例が描かれている。全員の年齢と、亡くなった人には十字の印が書かれている。自分はあまり親族のことを知らないし、自分の親の年齢すら知らないし、少し前に亡くなった祖父の死因もよくわからない。それを特に寂しいとも思わない。

もうひとつの用紙は、よくあるチェックテストみたいなものだった。設定された問いに対して5段階で回答する。すごく当てはまるものもあれば、全く当てはまらないものもある。

少し待って、奥の左手側にある部屋に通される。ドアは開いていて、自分で開けなくていい。診察室のドアを開けるのはいつも緊張するから、よかった。入ると椅子と、向かい合ってデスクに医師が座っている。間にビニールカーテンが下がっていて声が通じるか少し不安だったけど、耳のいい先生みたいだった。

先生と30分くらい話す。「うつになりかけてますね」というようなことを言われた。投薬はしないことにした。妹が昔ADHDの薬を飲んでいて結構しんどそうだったから、副作用がすごく怖い。今後の治療は、とりあえず二週間に一度クリニックに来て先生と話すというやり方を取ることになった。そんなことで治るものなのかわからない、だけど先生が「うつに一番効くのは休息なので、休みましょう」と言うので、プロの言うことを信じてみることにする。もし治らなかったらずっとこんな調子で生きていくことになるんだろうか? めちゃくちゃだるいな。

おじさんと30分話して2500円くらいを支払う。バグっぽくておもしろい。回答したチェックテストが返ってきて、点数は31点だった。よくわからないけど31点か〜と思った。

帰りに階段を降りるとき、初めて心療内科を受診する実績を解除した気持ちになってちょっと誇らしかった。

病名をもらうと、たまには病気になるのも悪くないなとどこかおもしろがってしまう。星占いを見て、誕生日があるのも悪くないなと思うのと似ている。

5月10日

けさ起きた時、白い羽根に包まれてゆっくり沈んでいくみたいな心地で目が覚めた。最近悪夢を見ることが多くて(しかもどれも長編)嫌だったので、今後はこんな風に安らかに目覚めたい

11時、バイトに出勤する。行楽日和すぎる陽気だ、コロナなんて存在しないみたいに人が多かった。ちょっとだけ遅刻しそうで急ぎたかったけど、前を子供連れがゆっくり歩いていて追い越し辛かった。小さな男の子がイエローサブマリンの服を着て手を引かれて、「さかおもい、このさかおもい」と言っていた。坂の重みを感じるためにゆっくり歩くことにした。

勤務中、暑くて夏すぎるね〜という会話をした。テラスには人が大勢ひしめいていて、3密を超えていた。5密だ。

帰りに本を買った。

久しぶりに富士そばに寄る。富士そばのカレーかつ丼が大好きだ。カレーライスであり、かつ丼でもある。かつ丼であり、カレーライスでもある。普段からdualityを標榜し愛する私にぴったりの食べ物。本当においしい。大好きだ。生活圏内に富士そばがある方が嬉しい。富士そばでそばを食べたことはない。

家に着く手前で犬の散歩がすれ違っていた。トイプードルと黒柴は立ち止まってしばらく見つめ合ってから、飼い主に引かれて行った。トイプーの方を散歩していた親子が、「さっきの犬、優しかったね」と話していた。わたしって犬の他犬に対する優しさのこと全然知らないなと思った。

雲の間から光の帯が差して、いい夕方だった。

4月5日

カードの締め日が迫るたびに、新しい本を買おうと意気込み始めるわね。そんなあなたのかわりに、あたしが読みかけの本のリストを作ってあげる。

【読んでる最中の本】

•『タイガーズ・ワイフ』返却期限4/13

•『芝生の復讐』

•『夜の樹』

•『アデスタを吹く冷たい風』

•『LAヴァイス

•『トゥルー・ストーリーズ』

積読中だけどさしせまって読む本】

•『ミスター・ヴァーティゴ』返却期限4/13

•『闇の中の男』

•『美しい子ども』

•『ノワール文学講義』

•『灯台守の話』

•『背後の世界』

 

書き出してみたら引くほど多いわね

4月2日

バイトに行った。全身がぼんやり慢性の体調不良で…と話したら、「除霊した方がいいかもしれないですね」と言われた。除霊か・・・

アーノルド・ローベルの全仕事』を買って帰った。

 

「推し」とか「友達」とか「彼氏」とか「彼女」とか、既存の言葉に人をあてはめることにずっと違和感を感じている。それぞれの関係や向ける感情はぜんぶオリジナルで、一回性のものだと思う。だから全部、安っぽい分類に貶められるように感じてしまう。友達に、そのひとの知り合いではない別の友達のことを話すとき、「友達が〜」って言うのも、仕方ないんだけどなんだか罪悪感あるくない?「別の友達がね」とか言い換えてみるけど、やっぱり難しい。

 

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3月31日から4月1日にかけて

朝ねたせいで夜8時におき、

焼きそばを作って食べた。キャベツが重すぎて私の手に負えず、廊下を転がり落ちて、私に「うわあん」と言わせた。

クラッカーがあったのでジャムをつけようと思ったが 冷蔵庫にあったジャム6つのうち 3つは終わっているジャムで、2つは化石になったジャム、1つだけもう少し生きられそうなジャムがあり 食べた。

キャンプの誘いが来る。かなりの嬉しさ。

過去の自分の社交性の出がらし。ありがたいことだ

 

カポーティの『夜の樹』、表紙からして2月っぽく、理由はよくわからないがとにかく2月を想起させる。そう思って2月に買い、読みはじめたが4月になってしまった。

『長く暗い魂のティータイム』もうすぐ読みおわる。前作よりダークが主人公っぽいし、ところどころかわいくて好感が持てる。すごく面白い。読み終わりたくない・・・だってこのシリーズにはもう続きはないのだから。。

2時間くらいねた後 ごはんを買って久しぶりにゲームをあそぶことができた。最近はゲームのストーリーテリングやキャラクターの創作および魅せ方のことをよく考えている。思うに、その人物の大切にしていることを定めて、その人のとても好ましい点と嫌な点を両方しっかり設定することがキャラクターの基礎を安定させる方法なのではないか… 

3月29日

図書館の機械がエラーを起こしていて、図書館の人がなんか叱るみたいに言ってきた。次に会ってももう一生「すみません」とか言わん。帰り際カードを置き忘れそうになって、また怒られた。嫌だった。

コンビニが死ぬほど混んでいた 地域のご老人が食糧を買っていた。普段からせまいのに一段とせまくてつらかった。

大学で桜が咲いてて お花見がしたい。誰にも声をかけられない・・・

 

コロナ前の自分が愛と元気のかたまりのように思えてときどき心が分裂しそうになるのに、どうやら分裂するまでもなく 彼女は私の中にもういない それとも隠れているのか? サークルの卒業する先輩が2人で花をくれて、受け取る時一瞬私は彼女に戻ったみたいだった。しかし言外に「卒業したらもう会わないね、さようなら」と伝えられることが私を私に引き止めた。2人はどういうつもりで 私に花を渡す役を引き受けたのか。会えずじまいで結局なあなあな別れになってしまうのは虚しい。使えないまま期限の切れたチケットの10枚綴り。一連の別れにはミシン目が入っていて、私には切り取る勇気がない。

昔の自分の遺物によって少し傷ついたりしているのは割にあわない。本当は「昔の自分」なんかなくて地続きの同じ人間でしかないのかもしれない。彼女にとって愛は 紅茶屋で配っている試飲のハーブティーみたいなもので、だから紙コップが捨てられる。

2020年11月に読んだ本

こんにちはまやです。

今年秋以降、読書の趣味にブーストがかかってしまいました。11月から読書の記録をつけてみたら楽しかったので簡単な感想とともに振り返ります。

日付は読み終わった日です。

 

・ジャネット・ウィンターソン『オレンジだけが果物じゃない

11月9日 紹介1冊目ですが、今年読んだ中で一番好きな本でした。 

初めて白水Uブックスの本を手にしたのですが、フォーマットのかっこよさに惹かれます。ギリギリ文庫棚に入らないサイズ感と、表紙の紙の手触りも好きです。

母親の望むまま崇高な生き方を全うする人生から転落した主人公。後半部で故郷に対して懐かしさと共に痛ましい気持ちも抱く彼女に共感を覚えます。メインである主人公の話の間に寓話的な挿話が挟んであり、どちらの続きも気になってすぐ読んでしまいました。

岸本さんの翻訳大好きです。すばらしい。

 

ヘミングウェイ老人と海

11月13日 あまり好みじゃなかったけど勉強になった 

老人と海(新潮文庫)

老人と海(新潮文庫)

 

新潮文庫からStar Classics 名作新訳コレクションというシリーズで出ていて、デザインがかっこよくて好みなので買いました。今思うと本をジャケ買いすることで正気を保った2020年だった…

年老いた漁師が獲物のカジキとの駆け引きのうちにカジキに親近感を抱くところで結構切なく感じる。。解説あとがきが面白かったです。ヘミングウェイ自身釣りが好きで、大物を釣った経験があるため漁の風景や感覚、海と魚の様子をリアルに描くことができたそう。趣味やっとくもんだなと思いました

 

ポール・オースター鍵のかかった部屋

11月14日 ニューヨーク三部作を読破

2冊目の白水Uブックス、並べるとなんだかかっこよさが増します。銀色の帯最高!

ニューヨーク三部作の中で一番小説っぽくて読みやすい。主人公が旧友ファンショーに向ける感情が興味深い、幼なじみのかつての親友として愛情や懐かしさを向けながらも才能とカリスマを持つ相手に劣等感みたいなものも抱く。好きな感情ですね・・・

三部作のこれまでの作品でもテーマになっていた「書く」行為について。自分を理解するために「書く」言葉が、自分をむしろ自分自身から隔ててしまう。書くことの孤独は他人との接触を失うことではなくて、自分自身から離れることの孤独。

 

 ・レイモンド・チャンドラー『大いなる眠り』

11月20日 ハードボイルド探偵小説の世界にふれてみる。

米文学の歴史を概観するという講義を受けていて、その中で取り上げられた一冊です。シャーロック・ホームズなどのイギリスの探偵小説とは違って、20世紀アメリカのハードボイルド探偵小説は事件よりも複雑な人間関係に重点が置かれるらしい。

読み終えてたしかに、事件のことは全然理解できていないけれど主人公の探偵マーロウをはじめ登場人物がキャラ立ちしていて印象深い。ヒロインは少々リアリティに欠けますが全力で探偵を振り回してくる女たちで、魅力的ではありました。マーロウかっこよかったな…

これも訳者あとがきが熱いです。

 

・ジャナ・デリオン『ミスコン女王が殺された』

11月21日 娯楽小説として楽しい!

ミスコン女王が殺された (創元推理文庫)

ミスコン女王が殺された (創元推理文庫)

 

ミス・フォーチュン・ミステリのシリーズ2作目。時系列として1作目のマジで直後に置かれていてびっくりしました。テンポがいいところが好きです。

主人公のフォーチュンはルイジアナの田舎に身を潜めているスパイで、いわゆる女らしいことをした経験がないのに元ミスコン女王の身分を装わなければいけないという無茶な立場。結構ミッションインポッシブル。愉快で心優しい(こともある)仲間がいて、友達も得て楽しそうでよかった。ひたすら主人公を見守る気持ち、3作目も読むのが楽しみ!!

 

・G.K.チェスタトン『奇商クラブ』

11月30日 19世紀末ロンドンだあ!

奇商クラブ【新訳版】 (創元推理文庫)

奇商クラブ【新訳版】 (創元推理文庫)

 

 1890年代のロンドンが気になっています。

珍妙な商売で生計を立てる6人の話が一つずつ読めるのですが、こんな商売ある?と思うものもあればこれは利用してみたいかもと思うものもある。都市が都市として複雑化していくにつれてニーズも多様化してくる、都市の有象無象さが描かれているように思います。

作中で、”文明が詩的でないというのは文明人の錯覚だ”というセリフがあり、チェスタトンの考えやテーマを代弁しているのかもしれない。

 

 

以上6冊を読み切れました。12月編は無事に年が明けてから書きます〜

よいお年を!